企業が作り出す商品・サービスのグレードが、いわゆる「品質」である。
昔は品質だけで商売ができたが、やがて市場競争が起き、品質だけでは競争に勝てなくなった。
また、成熟期に入った先進諸国の市場では、ある程度の消費財は行き渡り、多少品質が良い程度では売れない状況になった。
品質の高い商品といえども、他の販売促進が必要となる。
この販売促進戦略の一つが「ブランド戦略」であった。
そして、市場はさらに競争を激化し、「品質+ブランド」だけでは競争優位に立てない段階に入った。
ブランドを備えた高品質の商品を「どうやって」売るか。
この「どうやって」があるかないかで、勝敗が左右されるようになった。
この「どうやって」がビジネスモデルである。
例えば「飲料水を飲みたい」というニーズを満足させるものには、喫茶店、小売店のジュースなどがある。
その中で、どうやって缶ジュースを売るか。
そこに「自動販売機の普及」というビジネスモデルがあった。
品質、ブランド「+α」があったわけだ。
音楽携帯端末機iは、品質が良くブランドが新鮮という理由だけで売れているのではない。
iというソフトの普及によって大ブレークした。
このiこそがビジネスモデルである。
iとは、音楽を一曲単位でネットからダウンロードして購入したいというニーズを喚起し、それに応えた新技術である。
品質だけで勝負していた他社のメディアデバイスとは次元が違った。
1900年代初頭のアメリカは、農業バブルから都市バブルが起き、モーターリーゼーション時代へと移りゆく繁栄と成長の時代であった。
20世紀からアメリカの銀行は、国法銀行、州立銀行の二元制度を持ち、さらに商業銀行、信用組合などに分かれ、その役割が細かく規制されている中で、激しい競争を繰り返していた。
特に、不動産貸付には厳しい融資額の規制がかけられていた。
その中で、一つの銀行の規制限度の担保設定に対して、劣後(後順位)の担保を設定してさらに融資のビジネスチャンスを得るモデルが拡大した。
これが、銀行の営業品質・ブランド以上にどうやって融資を拡大しようかとする方法、ビジネスモデルであった。
初期の百貨店が、市場で顕在化した「欧米文化に対するあこがれ」というニーズに対して、日本の和風建築ではなく、西欧風の石造りの建物で西欧文化を体現させながら商品を売る手法も、M、Eにとっては、創業何百年という老舗のブランドだけではなく、さらに「どのようにして」ハイカラな新しい商品を売るかというビジネスモデルであった。
先に紹介した「回遊性」を都市戦略のビジネスモデルと位置づけると、議論の目的は、より鮮明になるだろう。
回遊性の滞留時間を確保する戦略は、裏を返せば、顧客を他のエリアに行かせないことである。
マーケティング用語で言えば「スイッチング」である。
例えば、それまでLの鞄にロイヤリティ(忠誠心)を持っていた愛用者が、Sにスイッチングすることと同じである。
不動産ファイナンスの世界では当たり前のように使われている「抵当権順位」がある。
説明するまでもなく、広く知られている担保権の設定順位であるが、もともとこれもビジネスモデルの一つである。
この抵当権順位が、現在まで引き継がれている不朽の名作とのビジネスモデルであることは、ほとんど知られることなく、当たり前のように使われている。
「ヘッジファンド」もビジネスモデルである。
リスクの高い資産に対して高度なリスクヘッジ、リスクマネジメントの技術を駆使する。
当然、これらの技術は高いコストとなり、本来投資家が得るはずの収益を圧縮することになる。
本来得るはずの収益は圧縮されるが、その分信頼性の高い収益となる。
この信頼性の高い収益に高いレバレッジを利かせて、目的の投資収益を得る。
ヘッジファンドが「ハイレバレッジ投資機関」と呼ばれる所以である。
現在の市場では、「品質」、「ブランド」そして「ビジネスモデル」がコラボレートしてはじめて、市場での競走優位が獲得できるのである。
ITを駆使して品質の高い高層ビルを作り、エリアブランドでプレミアムな価値を作るだけでは生き残れない。
エリア内では、自分のビルへ流入させる導線は確保するが、他のビルへ流出する導線は設けない恣意的行為がなされることがある。
あるいは、何らかのバリア(障壁)を設けることによって、自社の回遊性からの流出を避けようとする。
これらは市場経済において、過度に利益を追求した結果起きる排他的な回遊性である。
そのような状況では、公開スペース、オープンスペース、パブリックスペース等の共有もできず、最終的には治安、防災面での安心性も確保することができない。
その結果、エリア内のネットワーク機能を下げ、エリアブランドの魅力を下げてしまい、他のエリアとのエリア間競争にも大きな影響が出てくる。
このような市場では、市場競争により資源再配分等の自動調整機能を失ってしまうため、行政によるユーティリティースペースの設置、ネットワークの設置等の推進が行われ、市場を健全に機能させる必要がある。
高度に集積したエリアでは、中心に位置するユーティリティースペースが有効に機能することがある。
従来のパブリックスペース、公園、公開スペースでは、必ず何らかの建造物が作られている。
一つ間違えば、犯罪の温床、ゴミ等による社会コスト増大の元となり、一番管理者が嫌うものとなる。
したがって、オープンスペースが作られたとしても、そこを柵で覆い、また段差を設けて人が使いにくいようにしてしまう場合が多い。
犯罪、ゴミ問題等を防ぐには、高いコストが必要となる。
しかし、このようなコストを支払っても、エリアの魅力が上がるようなユーティリティースペースの必要性は、明確な市場ニーズであり、市場メカニズムにおける重要な戦略的シールとなりうる。
このような無目的のスペースが、やがて多目的スペースとなり、有効なユーティリティースペースとなる。
市場を健全に機能させるためには、どうしてもこのような無駄にみえる余裕が必要なのだ。
もちろんそれには利権があり、建築をせざるを得ない事情もあったろう。
社会の変化が早く、ニーズも多様化していく中で、ニーズに合った建造物にタイミングよく変化させることは非常に難しい。
高度に集積したエリアでは、むしろ「何もない」プレーンなスペースの方が有用性は高い。
そこに参加する人たちが自由に使い方を考える。
「ここではこのように休憩しなさい」、「この石の上を歩きなさい」という規制は、人々を疲弊させてしまう。
都心部の再生手法として用いられるのが、ランドマークとなる高層ビルの建設である。
東京都心の新興エリア六本木、品川、あるいは老舗の丸の内、日本橋、さらには大阪、名古屋、博多等の都心部では、20階から30階超の高層ビルが建設されてきた。
これらの動きは日本に限らず、上海、台北、ドバイ等のアジア新興都市でも同じである。
そして、この高層ビルにおいても、それが一つのエリアとして、顧客の囲い込みを行う回遊性の戦略をとる。
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